
外部環境への配慮が重要な船舶塗料
2003年より船舶用塗料事業(現:日本ペイントマリン株式会社)で防錆塗料、水性塗料の研究開発や技術サービスに15年携わり、2018年1月より、この臨海評価技術センター(岡山県玉野市)の所長として就任しました。船舶塗料は塗膜としては厚みのある100μm以上の塗膜を常温乾燥により形成します。そのため天候や四季の変化により生じる幅広い温湿度範囲で塗膜形成できる技術力が求められます。また、船底塗料は船の速度(燃費)に影響するフジツボなどの海洋生物の付着を防ぐと同時に、海洋環境への配慮を強く意識した設計が必要となります。日本ペイントマリンでは1990年世界で初めて加水分解型錫フリー船底防汚塗料を開発するなど、業界初の製品にチャレンジする社風は当社の強みです。

臨海評価技術センターに新しい役割をプラス
この施設は1973年、船底塗料の評価・分析をする目的で「臨海研究所」として設立されました。昨年、センター長として私が就任した際に、名称を「臨海評価技術センター」と変更しました。これまでの役割に加え、塗装現場で起きる様々なトラブル解決や、塗膜の未来性能を予測する評価手法を確立し、ユーザーへの技術アピールができる施設となることが今の目標です。評価・分析だけでなく、課題解決提案ができる組織を目指し、様々な発想やアイディアを気軽に出し合えるオープンな風土づくりとメンバーのパフォーマンスを最大限に引き出せる環境づくりに力を入れています。工作が好きなので、既存の装置の改良や、新しい評価手法を手作りすることで、メンバーのアイディアをサッと作ってすぐに確認できるスピード感が理想ですね。メンバーの自由な発想やアイディア、物作りへの思いに耳を傾け、物作りでサポートする事で小さな成功を生み出し、更なる成果へ結びつけられると嬉しいです。

自然環境を最大限生かした臨海評価技術センターへ
臨海評価技術センターの役割として特に重要なのが、塗膜の経年変化予測にあると考えています。塗装後の船底塗膜が海洋にさらされることで起こる変化を正しく予測することは、船底塗料製品の信頼性や品質確保はもちろん、新商品開発や製品改良時などにも活かせる大きな強みになります。この臨海評価技術センターは海に面していることから、センター内で評価・分析に使用する海水は合成海水ではなく、全て自然海水です。実際の航海と類似した環境を作り出せることは大きな利点です。海だけでなく山もあり、自然環境を生かした新しい評価方法の確立や、バイオミメティクス(*1)を活用した新しい塗料開発など、臨海評価技術センターとして、チャレンジして行きたい目標はまだまだたくさんあります。まずは、より精度の高い評価・分析結果を短期間で開発にフィードバックすることで、より地球環境に優しく防汚効果が高い商品開発を実現したいと思います。




※記載内容および所属役職等は掲載当時の情報です。