セルサイド・アナリストと共同社長のスモールミーティング 質疑応答要旨

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質問者:BofA 証券株式会社 榎本尚志氏

  • A1 (ウィー)
    周知の通り、中国は当社にとって非常に重要な市場です。アナリストの皆さんと同様に、当社も中国市場を注視していますが、懸念もあります。それは、中国が依然としてゼロコロナ政策を続けていることです。足元では改善の兆しが表れ、具体的な動きも出てきたことから、この傾向が続くことに期待しています。中国は、当社が1992年から事業を展開している極めて重要な市場です。だからこそ、短期的な視点で見るのではなく、長期的な視野で、粘り強く市場拡大に取り組んでいくつもりです。
    中国は当社にとって非常に魅力的な市場であることに変わりありません。中国へ参入して以来、建築用、工業用の塗料市場がともに急速に変化していく状況を当社は目の当たりにしてきました。中国は限りない成長に向けて、新たなイノベーションを歓迎する市場です。
    日本ペイントグループでは、多くのイノベーションが中国で生まれました。当社は中国で、こうしたイノベーションに向けた実験を何度も実施しています。対象は製品や技術開発、デジタル技術、マーケティングなどさまざまな分野に及びます。こうした技術の進歩やイノベーションの多くが実は中国で生まれ、中国から始まっています。
    例えば、現状に満足する傾向が強い日本市場のイノベーションには、中国市場ほどのスピード感はありません。それは特に建築用塗料の分野で顕著です。同じ製品を販売し続けることは当社にとって好都合でもありますが、実際は市場の後押しがないとイノベーションは進みません。この点が、中国市場と他の市場との違いと言えます。
    イノベーションが活発な市場では、進歩的で優秀な企業や人材が参入し、その成功が歓迎されます。一方、動きが小さい市場では全てが平均的で、変化を望む声が小さいため、成長機会も限られます。これに対して、中国市場には多くの成長機会があるというのが、当社が抱いているイメージです。
    短期的な見通しでは、当然ながら課題もあります。不動産市場、特に新築住宅市場は厳しい状況であり、報道によると、過去18ヵ月間にわたってマイナス成長が続いています。新築住宅の販売、住宅販売面積、不動産ディベロッパーによる土地購入など、あらゆる指標が低下しています。
    当社はこうした状況の影響を受けており、当然ながら、新築住宅向け事業が低調に推移しています。慎重な経営方針のため、取引量が大幅に減少した大口顧客もあります。しかし、当社はこうした状況を少し立ち止まって市場を再評価する機会と捉えています。
    中国市場は過去4年間で年率30~40%の急成長を遂げてきました。競合他社の中には、成長を続ける中国でその波に乗り遅れてはならないと判断し、通常では想定できない行動に出る企業も多く見られました。
    私は現状を受け入れていますが、それには理由があります。ここでいったん立ち止まって市場を再評価することで、冷静な判断が可能になるからです。このような状況になって初めて、理性的な判断力を取り戻せるのではないでしょうか。「これはビジネスだ。投資を回収して収益を上げなければならない」と主張する声もありますが、ここで小休止するのも悪いことではないと考えています。私は、好ましくない状況を肯定的に捉えようとしているのではありません。それは実際に良い面もあるからです。
    現在のような厳しい状況下でも、力のある企業は形勢を立て直し、前進していきます。当社も現状と向き合い、継続性の高い顧客を見極め、その顧客との取引を増やしています。経営難に陥っている顧客とは距離を置いて、未収金の回収について厳しい方針を取っています。まさに当社は現在、立て直しを実行している段階と言えるでしょう。中国の不動産部門の現状は皆さんもよくご存じと思いますので、これ以上の説明は不要と考えます。
    当社が成長を実感しているのは、長年にわたって当社の強みになっているDIY部門です。DIY部門は現在も成長しています。当社は従来、1~2級都市などで高いシェアを維持しているとご説明してきましたが、日本ペイントのブランド力は大都市圏で極めて強いと言えます。一方、3~6級の地方の小規模都市では、地場ブランドとの競争が激しい状況ではあるものの、約2年前からシェア拡大に取り組んでいます。
    販売網の構築や新店舗の開設、新たなチームの立ち上げを小規模都市で実現するには時間がかかります。昨年9月に実施したスモールミーティングで私は、「小規模都市でのシェア拡大こそが、当社の成長戦略の重要な柱になる」と述べましたが、中国政府によるゼロコロナ政策の継続の影響を踏まえた上での発言でした。過去12ヵ月間のゼロコロナ政策の影響としては、大都市でロックダウンが実施されたことで、小売店の売上に影響が出ています。また、行動制限の導入で塗装業者が作業できなくなるため、塗り替え需要が減少しています。
    一方、3~6級都市などでは、引き続き成長が続いています。大都市圏と3~6級の小規模都市を比較した場合、DIYの成長率には大きな差が見られます。誇張ではなく、DIY市場全体を支えているのはこうした小規模都市です。大都市が多くの難局に直面している中で、当社はなぜ成長し続けているのか?それは、当社が既に先行投資を始めていたからです。適切な判断に加えて、運も味方しました。先行投資の結果、当社が圧倒的な強みを持っているものの成長が鈍化している市場と、現時点で当社のシェアは小さいものの存在感を増しつつある市場の両方で、ある程度の利益を上げています。そして、実際に成長しているのは、後者の小規模都市の市場です。
    中国全体では、不動産、特に新築市場での低迷と、DIY市場の成長は相互補完の関係にあります。あくまでも短期的に見た場合ですが、当社にとって中国市場に特段の懸念材料はないと考えています。当社は中国で今後も長く事業を展開していく方針ですので、長期的な視点で当社を捉えてください。当社は現状を肯定的に捉え、投資を継続しています。
    長期的な観点では、中国は米国との貿易摩擦や市場の不安定さ、通貨問題、地政学的な緊張などの課題を抱えています。しかし、こうした全ての問題を考慮したとしても、中国は巨大な市場です。GDPのプラス成長が続く限り、当社はシェアを拡大していくことが可能です。中国は今年、コロナ影響にもかかわらず、約3%のGDP成長を維持すると予測されています。1人当たりの塗料消費量が先進国の1/3程度の中国市場において、都市化の進行や中産階級の拡大、GDPのプラス成長が続く限り、塗料市場には大きな成長余地があります。先進国との格差が小さくなるまで、かなりの時間が必要になるでしょう。
    中国は過去25年間で、急成長を遂げました。市場には多くの中古住宅があり、老朽化が進行しています。このため、塗り替え市場、中古住宅販売市場、リノベーション市場が本格的に動き出すことは確実です。例えば、13年前には新築市場が主流だったため、住宅の塗り替え需要はほぼありませんでした。しかし、現在では北京や上海、広州などの大都市において、住宅取引の半分が中古住宅になっています。中古住宅の購入に際しては、人々は外壁や室内を塗り直したり、改装したりします。こうした変化が急速に進めば進むほど、当社にとっては好都合になります。
    当社は大都市圏での販売力に加え、今後さらに積極的な進出を予定している小規模都市での販売力の向上、世界的な企業としてのブランド力があります。中国経済の成長は今後も期待できることから、中国の営業基盤は十分に確立できていると考えています。四半期ごとに変動する株価と同様の見方ではなく、ぜひ長期的な視点で当社をご理解ください。

  • A2 (ウィー)
    両方です。足元では、経済成長に伴い市場が拡大しているほか、原材料価格が高騰する中で、過去2年間で供給不足が頻発しています。サプライチェーンの混乱、供給不足、工場閉鎖などが要因と推察しますが、実際に需要が供給を上回る状況です。原因が何であれ、供給が不足しているのは事実です。供給不足に陥っても、大口取引する大企業は製品調達ができても、中小企業は困難になります。
    また、日本ペイントのような大手ブランドが特定の市場に焦点を絞れば、その市場でシェアを獲得することは難しくありません。これに対して、中小企業は製品の調達や信用貸付が困難などの理由で売上が減少・消滅し、撤退や倒産を余儀なくされるケースもあります。当社の成長は、こうした状況からもたらされています。

質問者:ゴールドマン・サックス証券株式会社 池田篤氏

  • A1 (ウィー)
    今年10月の需要は、前年同月比で大幅に減少しました。
    背景としては、当社は昨年10月に単月で3回の製品値上げを実施し、過去最大の売上収益を記録したためです。原材料価格が高騰していることから、可能な限り迅速に値上げを実施しました。1ヵ月のうちに3回もの値上げが実施できたのは、当社に価格決定力があるからです。このため、製品値上げという判断は苦肉の策ではなく、むしろ当社の強みと言えます。
    製品値上げの結果、当社製品の販売店やサプライヤーは仕入れ量を増やし、在庫を積み上げる動きに出ました。さらに、価格の高騰が予想される翌年よりも、製品をすぐに仕入れる方が得策と判断しました。これが当社の売上収益が昨年10月に急増した理由です。
    今年10月には、複数の大都市がロックダウンの影響を受けました。さらに、北京では大規模な会議が開かれ、開催1~2週間前から物流に深刻な影響が出ていました。中国政府が、コロナ拡大につながる人の移動を規制していた影響です。この他にも複数の要因が重なり、今年10月は売上が減少する結果になりました。
    来年の春節(旧正月)は、例年(2月)よりも3週間ほど早い1月22日です。春節前の2~3週間は帰省者が増えるため、例年売上が減少します。また、塗装業者も春節を控えて作業を一時中断することから、1月は売上が減少すると見込んでいます。
    当社の売上は例年、12月に減少します。季節的な要因なので、今年も同様の傾向と見込んでいます。つまり、10月に落ち込んだ売上収益は11月に大きく回復し、12月に再び減少すると予測しています。このため、この時期に市場に好感される文言を述べたり、不確実なことを語ったりすることは賢明ではないと考えています。当然、売上が伸びることを望んでいますが、現状も十分に理解しています。先にご説明したさまざまな理由から、私の発言は慎重を期したものであると捉えてください。

    (若月)
    補足すると、大都市圏に強みを持つ当社と、3~6級都市でのシェアが大きい競合他社との違いが挙げられます。コロナ影響に伴う混乱は、共産党大会が開催された北京や上海などの主要都市でより顕著に表れています。
    このため、具体的な数字は不明ですが、相対的に当社が受けた影響の方が大きいと推察しています。当社は、3~6級都市への参入を図っていますが、まだ道半ばであり、依然として営業基盤は特級や1級都市などの大都市圏が中心となっています。こうした違いが、競合他社の売上収益が+20%に達した一方で、なぜ当社が減収となったかを理解する上でのヒントになるかと思います。

  • A2 (若月)
    全ての数字を開示することはできませんが、全体的な傾向をご説明します。当社は、1級都市を含む大都市で成長を続けていますが、短期的な打撃を受けました。一方で、小規模都市での成長も目指しています。ただし、売上収益の大半は、現在も都市圏で占められています。

    (ウィー)
    当社は販路チャネルの構築などを通じて小規模都市で成長しつつあり、全てが順調に推移する兆しが見えています。ただし、下半期は当初予想とは異なっており、大都市、小規模都市ともに必ずしも順調とは言えない状況です。

質問者:モルガン・スタンレーMUFG証券株式会社 藤田知未氏

  • A1 (ウィー)
    若月が昨年第2四半期に「アセット・アセンブラー」モデルについてご説明しました。このモデルの一角を構成するのが、パートナー企業との関係構築です。
    パートナー会社は、日本の5社に加え、Nipseaグループ、米国のDunn-Edwards社、豪州のDuluxGroupなどが該当します。DuluxGroupは豪州・ニュージーランドに拠点を構えるほか、今年買収したCromology社とJUB社も傘下に抱えています。Dulux Groupは豪州だけでなく、ニュージーランドにも拠点を構え、当社が今年買収したフランス大手Cromology社とスロベニアの大手企業であるJUB社も傘下に抱えています。
    こうした企業グループを形成する中で、当社は「アセット・アセンブラー」としての役割を果たしています。財務力を生かしながら、各パートナー会社が相互に貢献できるかどうかを判断します。しかし、これが経営の基軸ではありません。
    経営の基軸は、各パートナー会社の自律性、独立性です。経営は各パートナー社に委ねられ、各社がそれぞれの活路を自ら切り開いています。各社が協力し合うことで利益を上げ、相乗効果を享受するため、企業間や役員同士の協議を通じて、相乗効果の機会を探っています。
    このため、「なぜ中国は日本を助けないのか?」という発想はありません。もちろん、そうした機会があれば、提案する可能性はありますが、中国のビジネスモデルが対象とする主目的ではありません。例えば、日本のケースでは、まず自国内で問題を解決できないかどうかを検討します。「日本の状況が悪い」とのひと言では片付けられませんが、現時点で日本の事業環境が極めて厳しいことは事実です。こうした厳しい状況が日本の一部のパートナー会社に打撃を与え、売上収益は2019年水準を下回って推移しています。
    売上収益の推移を見ると、多くの企業が2020年にコロナ影響を受けた後、2021年に回復に転じたことが分かります。大きな期待とともに迎えた2022年でしたが、コロナ影響が依然として残っており、当初予想ほどの回復には届いていません。2022年に日本事業で最も大きな影響を受けたのは自動車用事業です。日本では毎年、約900万台の自動車が生産されていますが、中国のサプライチェーンの混乱で半導体や自動車部品が不足し、数週間にわたって工場が閉鎖されたことなどを背景に、日本の生産台数は約750万台まで落ち込みました。こうした生産減の影響は大きく、当社だけでなく、競合他社も打撃を受けました。
    また、原材料の問題もありました。供給不足問題と重なり、石油をはじめとした大半の原材料価格が過去2年間で高騰しました。極めて異例な措置ですが、当社は原材料価格の高騰を製品価格に転嫁する方針を実施しています。ただし、日本では中国ほど急速に値上げを進めていません。日本で月3回も値上げを実施すれば、顧客の怒りを買ってしまいかねません。それでも当社は昨年、定期的に値上げを実施してきた結果、顧客の意識を変え、許容レベルを引き上げることができました。
    しかし、製品値上げが原材料価格の増大分を相殺したとは考えていません。日本はまだ回復途上にあり、利益率も3年前の数値を依然として下回っています。それでも将来性を確信しているのは、従業員がプレッシャーを感じているからです。従業員は会社が圧力にさらされており、業績を改善しなければならない必要性を理解しています。事業の進め方や取り組み方を変えなければ、業績は改善しません。
    こうした状況下、日本の従業員は昨年来、一体となることができました。全従業員が一丸となって、マインドセットと企業文化の変革を目指す取り組み「Lean For Growth(LFG:無駄を省いた成長)」の日本版「J-LFG (Japan Lean For Growth)」を実践しました。無駄の排除、マインドセットの変革、仕事への取り組み方がJ-LFGのコンセプトになっています。
    J-LFGはより良い方法を探るべく、従業員それぞれが自問しながら取り組むボトムアップ型の活動です。経営陣が指示したことを実行するトップダウン式とは異なります。経営陣からのアプローチは、「これを実現させたいが、良い方法はないか?」という問いになります。J-LFGは今年始まった取り組みで、企業文化として定着するまでは時間がかかりますが、既に従業員から前向きなフィードバックが届いています。
    これらは全て、今起こっている変化です。2023年は営業コストや従業員の意欲だけでなく、市場そのものが改善すると想定しています。前四半期には自動車生産台数も増加したことから、今後も市場の回復は続くと予想しています。以上の考えから、日本が中国に支援を求める必要はないというのが私の見解です。

    (若月)
    中国には最新の自動化工場がありますが、中国と日本ではロットサイズが大きく異なることを考慮する必要があります。中国と同じ規模の工場を日本に建設しても利点はほとんどありません。確かに日本の工場は古いかもしれませんが、それは捉え方によります。先日栃木工場を視察したウィーがご説明いたします。

    (ウィー)
    先日初めて、操業41年を数える栃木工場を訪れました。1時間半かけて視察した後の会議で、経営陣には「設立41年を迎えた工場にはとても思えない」と伝えました。これまでの功績を称賛した上で、従業員を激励しており、築年数は問題ではありません。

    (若月)
    長く塗料業界に従事し、ICIでの経験を持つ当社取締役のピーター・カービーも、愛知高浜工場を視察し、大きな感銘を受けました。日本の工場には古い印象があることは理解しますが、工場の新設ばかりが選択肢ではありません。工場新設は一見好ましい選択に思えますが、必要となる全てのコストを検討しなければなりません。また、成長速度が遅い日本市場において減価償却が可能かどうかを検討した上で決断しなければなりません。一方で、工場の状態はそんなに悪いのか、それほど老朽化が進んでいるのかを再確認すべきです。当社の評価では、状態は良好で、老朽化も進んでいないという見方をしています。当然、改善が必要な箇所には手を加えていきたいと考えています。

    (ウィー)
    当社は投資を継続しており、今年12月に稼働予定の岡山新工場に関しては、西日本に工場を設置することを目的としています。当社の自動車用水性塗料の生産設備は東日本に集中しており、西日本にはほとんど存在していません。塗料市場は溶剤系から水性やカーボンニュートラル製品へ移行していることから、自動車用の水性塗料市場が今後も伸びると予想しています。このため、将来を見据えて物流と供給の拠点を確立するため、岡山工場を建設しました。

  • A2 (若月)
    重要な点が2つあります。まず、建築用市場は、当社と、既に統合を繰り返してきた数社の競合他社が市場を占有している状態です。工業用市場の一部は当社のシェアがかなり高く、新幹線に至っては圧倒的な地位を確立しています。当社の日本での位置付けはかなり有利です。日本塗料工業会の会員は長い間変わっていません。つまり、ご指摘の通り、各社は十分な収益を上げているため経営が安定しており、特に投資する必要もないのです。
    機会があれば当然、買収には関心があります。ただし、最新設備が整った工場に投資したり、買収したりすることに意味があるのか?投資回収率はどうなのか?大きな負担を抱える必要があるのか?などについて十分に検討する必要があります。答えは1つではありません。
    日本では経営難に陥り、売却を希望する企業が存在しないのが実情です。なぜなら、小さなニッチ市場でも棲み分けができており、各社がそれぞれニッチ市場で足場を築き、その市場での立ち位置に満足しているからです。各社が不満を持っていないのに、私が「現状に満足すべきではない」と口を出して、関与することはできません。
    当社は投資に関する制限を設けていません。それは日本でも同じです。もし機会があり、資産価値や投資額、投資回収の評価が十分に納得できる案件があるのであれば、買収に乗り出します。ただし、売却を希望する企業がない中で、「日本ペイントが全国各地で買収に乗り出し、混乱を引き起こそうとしている」と思われるのは不本意です。なぜなら、ニッチ企業は現在の立ち位置に満足しており、売却を望んでいないからです。それが日本の問題とも言えます。

質問者:野村證券株式会社 岡嵜茂樹氏

  • A1 (ウィー)
    確かに需要は伸びています。「成長は続くのか?頭打ちになるのか?成長は加速するのか?」という質問に関してですが、中国のGDPは、これまでのように1桁台後半の成長率を示すことはなく、全体的な成長は頭打ちになると予想しています。そうなると、消費者心理の影響もある程度は受けると想定しています。
    このため、DIY向け需要は伸び続けますが、これまでのような伸び率には届かないと見込んでいます。ただし、需要は市場の成長だけにけん引されるものではありません。市場の成長を刺激するのも、当社のようなメーカーの仕事です。当社はイノベーションを通じて、塗り替えや改装などに対する消費者の意欲をかき立てるだけでなく、顧客が求めるものを商品化できる力を通じて、市場の成長を後押ししていきます。
    当社としては、成長はするが、従来の伸び率には及ばないケースに対して、多くのイノベーションを市場に投入しています。順調に進めば、伸び率低下を相殺し、成長を押し上げます。当社のプレゼンスが低い市場への参入に成功すれば、そこがさらに成長の場となるでしょう。市場の成長速度は遅いかもしれませんが、市場を上回る速度で成長していくため、当社は他にも必要な対策を講じる用意があります。

  • A2 (若月)
    中国の見通しを慎重に見込む理由とその要因を需要、供給、競争に分けてご説明します。1つ目の基本的な需要はそれほど弱くないため、他の2つの要因の影響をより大きく受けると考えています。その1つは、コロナ影響による物流の混乱です。もう1つは、競合他社が地方都市でより多くの事業を展開しているのに対し、当社は大都市に商圏が集中していることによる影響です。これはあくまでも短期的な予想です。

  • A3 (ウィー)
    顧客は打撃を受けています。とにかく売れ行きが低迷しているためです。政府は銀行に対し、市場を安定させるために責任ある融資を行うよう指示し、積極的な融資を促すことで市場のてこ入れに動いているのです。しかし、当社の大口顧客である大手不動産ディベロッパーの多くは、かなり長期にわたって厳しい状況に置かれています。政府が三道紅線(Three Red Lines:不動産融資規制)を導入して以来、多くのディベロッパーが苦境に立たされています。

  • A4 (ウィー)
    需要の低迷には要因があります。多くの不動産開発事業は、ディベロッパーの資金繰り問題で中断されているため、キャッシュ・フローや流動性が回復すれば、事業が再開される希望があります。しかし、本当の明るい兆しは、事業の再開ではなく、住宅購入者が市場に戻ってきた時と考えています。その時に市場全体が活気付くのではないでしょうか。

質問者:JP モルガン証券株式会社 佐野智太郎氏

  • A1 (ウィー)
    当社の売上が市場ほど大きく落ち込まなかった理由は、市場の落ち込みに対する当社の対応策にあります。当社は中国で長期間にわたり、不動産ディベロッパーの合併・統合を見てきました。上位30社は小規模ディベロッパーの買収や合併を通じて規模を拡大する一方、どの企業も上位30社に食い込もうと画策していました。
    しかし、中国政府が推し進める三道紅線とデレバレッジ(過剰債務削減)政策が定着したことで、大手ディベロッパーが打撃を受けるのを目の当たりにしました。大手ディベロッパーは成長を目指して融資を利用するため、こうした措置の影響をより大きく受けたのです。
    当社は、大手ディベロッパーが苦境に立たされているのを目撃し、戦略の重点を移し始めました。レバレッジをあまりかけずに事業を展開して成長を続けている30位以下の地方不動産ディベロッパーへと軸足を移し、各社との関係を構築し始めました。さらに、不動産ディベロッパーだけでなく、元請け業者やサプライヤーとの関係構築にも力を入れ始めました。
    こうした取り組みの中で、新たな販売網を構築するだけでなく、全く新しい製品部門を立ち上げることができました。新たに関係を築いた企業や業者が求めるものが、大手ディベロッパーが求めてきたものと少し異なっているためです。これは今から15ヵ月ほど前のことです。この結果、上位30社からの売上減少分をある程度補完することができました。ただし、何とか帳尻を合わせることはできたものの、これで十分とは考えていません。市場全体が受けた打撃ほど深刻ではないにせよ、依然としてマイナス成長が続いているからです。

  • A2 (ウィー)
    市場が低迷していることは理解しています。しかし、営業部門との会議では、売上減少を正当化できる理由はないという議論になり、常に「市場が低迷していても、別の機会を見つける」という結論に至ります。

    (若月)
    念のためお伝えしますが、Project事業は第1~3四半期に-5%、-5%、-6%と推移した上で、第4四半期は-45%と予想しています。-45%はやや衝撃的ですが、皆さんのご参考までに、逆算方式で割り出したものです。この数字にはさまざまなマイナス要因が反映されているため、誤解を招くかも知れませんが、Project事業の業績がやや悪化する可能性をお伝えするため、この数字を提示しました。
    また、2021年第4四半期のProject事業が好調だったことも事実です。このため、常にお伝えしている通り、前四半期比や前年同期比の数字にとらわれないでください。Project事業が低迷しているのは事実ですが、それを補完できる事業の1つが、現時点で中国の建築用の大半を占めているDIY事業となります。

  • A3 (ウィー)
    当社は常に十分な報酬を提供しています。「アセット・アセンブラー」モデルのもと、各パートナー会社の経営陣に対して自律性と独立性を保証しており、各パートナー会社の代表を選任する責任は、当社(NPHD)経営陣にあります。こうした経営モデルこそが、当社が他の多国籍企業との差異になっていると考えています。
    他の多国籍企業では、例えば米国の次は中国に人材を異動させながら、経験を積ませるケースがよく見受けられます。当社の経営モデルでは異動はほとんどありません。市場をよく把握し、顧客との関係を築き、利益を上げている人材を異動させる必要はないと判断しているためです。むしろ、その人物をできるだけ長くその市場に固定し、収益貢献させることに報酬提供の主眼があります。その人材を異動させて、新たな市場で成果を上げられるようになるまで、例えば3年かかるとすれば、改めて最初から経験を積ませる必要はないと考えています。
    このため、当社の人材管理方法は他社とは少し異なり、優秀な人材を常に満足させて、他の国に行きたいという気持ちにさせないためのインセンティブ制度が必要となります。
    各パートナー会社の経営陣に十分な報酬を提供することで、波及効果も期待できます。彼らは、自身でチームを作り上げた上で、今度は部下のスタッフが各社にとどまり、チームとして成果を継続的に上げるよう部下に報酬を提供するからです。
    一方で、多国籍企業に入社したため、グローバルに活躍したいと考える若者もいます。このような希望にも応えていますが、それは当社の人事方針の主軸ではありません。あくまでも特別な能力を持つ人材の希望には対応するということです。

    (若月)
    自律性には責任が伴います。各パートナー会社は、競合他社を超える利益を上げなければなりません。もし成果を上げられなければ、それは当社(NPHD)経営陣の責任であり、交代させる検討をしなければなりません。しかし、当社(NPHD)経営陣の責任と自律性に基づく経営モデルは現時点で極めて順調に機能しています。各パートナー会社の経営陣に適切な人材を選任しているためです。

質問者:ゴールドマン・サックス証券株式会社 池田篤氏

  • A1 (ウィー)
    私の仕事は利益率を上げることですが、利益率だけにこだわることは、当社の事業を把握する上で必ずしも適切ではないと注意を促しています。まず、事業の構成を注視するべきです。当社は成長を続ける企業として、新たな分野への投資を進めています。これらの分野で最初から利益を上げることはできませんが、将来的な利益の確保につながるように市場を構築しています。私は、利益率、少なくとも利益に関わる構成要素は、複数の要因に関係していると考えます。
    その1つは、当社が投資している成長分野や原材料の問題です。原材料価格が高い年もあれば低い年もあります。製品構成が前年と異なる年もあります。また、市場からの圧力により、プレミアム製品とエコノミー製品の販売量が逆転することもあります。利益率だけで判断するのは賢明ではありません。
    それでも当社が利益率を重視する理由は、営業担当者との会議の際に便利だからです。利益率が前年と異なる理由を説明するよう求めれば、回答は先にご説明した要因に沿ったものになります。最終目標はEPS(1株当たり当期利益)の継続的な成長です。利益率だけでなく、EPSの継続的な成長こそが、適切な判断材料となります。

質問者:モルガン・スタンレーMUFG 証券株式会社 藤田知未氏

  • A1 (ウィー)
    10月に北京で開催され、習近平国家主席の続投が決定した共産党大会以降、不動産市場に有利な政策が発表されています。しかしながら、私は役員に対して、過度に期待しないよう指示しています。新たな政策が施行されるまでには時間がかかり、施行されたとしても、実際には期待していた内容と異なるケースがあるためです。
    また、地域・地方政府によって規則の解釈が微妙に異なるため、当社は中国を単一市場とは捉えていません。当社は、地域・地方政府それぞれの政策に応じて、柔軟に対処します。中国は単一市場ではなく、政策も全国共通ではないと判断しています。このため、地方・地域政府の発表を注視しながら、それらに適した対応を取っています。

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