質問者:参加者1
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A1 (ウィー)
この1年は原材料価格が大幅に上昇し、コスト増の転嫁に努めてきました。当社が市場優位な立場にあり、製品値上げが可能な分野では確実に実施しており、グループ全体で大幅な値上げを実行しています。しかし、実際にはこうした値上げだけでは不十分であり、さらにやるべきことがあるというのが私の考えです。先ほどお伝えした通り、当社が強い分野では大幅な値上げを実施し、弱い分野では競争状況を判断する必要があり、積極的なアプローチを採らないケースもあります。
値上げ幅の判断要素の1つは市場への影響であり、これは販売数量に関する質問への回答にも反映されています。全体として、中国を除いたアジア全体では、販売数量の伸びは1桁台前半です。したがって、原材料価格の高騰は需要に影響を与えたことは確かです。しかし、販売数量の伸びがマイナスの市場においても、当社が市場全般よりは良い結果を出していることに安心する部分もあります。市場との比較は社内のチェック項目であり、当社の市場シェアの推定や市場での位置付けの基準になります。過去1年において、市場成長率は1桁台前半と低く、大幅な価格変動もありました。
日本についても同様に、インフレ環境に直面していると考えています。日本の市場特性は他のアジア地域とは少し異なり、当社のようなメーカーにとっても、顧客にとっても、学びのある市場です。日本と他のアジア諸国との反応には、多少のタイムラグがあると考えています。 -
A2 (ウィー)
背中を追うことができる上場企業の競合他社が存在することは常に良いことです。こうした競合他社の市場でのポジショニングに敬意を持っていますし、目標とする側面もあります。また、競合他社との差を埋めようと努めています。したがって、当社にとってインドネシアは改善の余地しかない市場だと考えています。
利益率については、競合他社との比較、当社グループ内の他の事業会社との比較においても、PT Nipsea社はかなりの実績を上げています。インドネシア市場の高利益率にはいくつか要因があります。重要なのは、分別ある競合他社とさまざまな側面で競争しており、価格のみが競争の要因ではないことです。そのため、製品ラインアップや市場でのポジショニング、塗料にとどまらないソリューションの提供などの面で差別化を図っています。競合他社、当社、他の複数の非上場企業を含めて、全ての市場参加者が非常に合理的な競争相手です。私は、このような友好的な競争を維持し、価格面のみならず多元的な競争が今後も維持されることを心から望んでいます。 -
A3 (ウィー)
例えば、40年という期間でインドネシアを見れば、8~9年ごとに通貨調整が起こり、その後市場が回復するパターンを繰り返しています。そして、市場の混乱を経て生き残った企業はより強くなっています。つまり、生き残った企業は過去から学び、分別があり、景気は右肩上がりに成長し続けるわけではないと分かっています。経済的混乱の種は常に潜んでおり、私たちはそれに備えておく必要があります。
したがって、市場参加者の心理はインドネシアと他の市場では若干異なるでしょうし、当社も市場が回復するたびに少しずつ強くなっていると実感しています。こうした意味において、利益率が常に高かったわけではなく、市場の混乱が起こるたびに少しずつ利益率が高まっているのです。これは、他の市場では見られない独自の市場力学であり、こうした良い状況が続く限り、好機を逃さず分別ある競争相手であり続けます。
質問者:参加者2
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A1 (ウィー)
5年前の時点では競合他社は当社の後塵を拝していましたが、その後は業績を伸ばし、現時点では当社により近いポジションにいると考えます。5年後については、やるべきことを上手くやっていけば、当社は競合他社よりもさらに先を行っているはずです。
当社が競合他社を上回るペースで成長できるという自信の根拠について疑問に思う方もいるでしょう。当社は競合他社について徹底的に調査しますし、競合他社も当社のことをよく調べているはずです。そのため、競合他社がどこで利益を上げているか、各市場での強みがどこにあるのか(当社が中国をセグメント分けしているように)を当社は把握しています。それにより、当社が遅れている分野で弱点を減らし、先を行く分野で強みを築いていくアプローチを採っています。
当社は、3~6級都市では競合他社に後れを取っており、こうした都市で存在感を高めるべく多くのリソースを投入しています。この戦略は昨年9月の投資家向け説明会でご説明していますが、その時点で既にこの戦略を採っていましたし、当社が採るべき戦略だと認識していました。そしてこの1年、当社は事業環境の厳しさにも関わらず、市場に食い込むことができたと確信しており、明るい兆候が見て取れます。
競合他社の1社が非常に強い分野の1つは、外装用塗料セグメントです。当社はより差別化した製品を市場に投入していきます。優れた製品を持つ強い競合他社が存在し、当社はその競合他社に後れを取っていますが、これは当社が望む競争環境です。当社が何をすべきで、競合他社に追い付くには何が必要かを認識し、そこに注力しています。こうした取り組みをしっかりと全てやり遂げれば、当社が得意とする分野で当社の強みを強化し続けることができて、競合他社との差をさらに広げることができると考えています。
塗替え市場に関して10年前に同じ質問をされていたら、Nipsea中国は塗替え市場への準備がまだ整っていないと回答していたことでしょう。実際のところは、当社は2011年には塗替え市場で広告を出稿していました。これは当社が「リフレッシュ(刷新)」事業と呼ぶもので、中国の自宅リフォームや再塗装市場におけるブランド名です。市場が生まれたばかりの11年前の出来事です。
当時から10年余りが経った今、状況は大きく変わったと感じています。特に1980年代後半から1990年代に建てられた住宅は、急速に老朽化しています。中国全体では、BtoC需要の1/3は塗替え市場に関するもので、住宅が老朽化する中で、今後も塗替え市場の成長が続くと見込んでいます。当社は2011年に広告出稿やシステム開発を進めるとともに、当社の訓練を受けた有資格の職人が安全に家庭を訪れて塗装することを可能にしながら、消費者に快適さを提供してきました。これは当社の実績であり、消費者に保証を提供するシステムを長年にわたって構築し、改善してきました。当社だけでなく、当社の提携先(塗装現場の職人、販売店、卸売業者)も皆、長年の努力から学んできています。このように、当社は成長に向けた良いポジションに付けており、今後も成長機会があると考えています。
なお、別の統計では、主要都市における不動産取引の約50%は中古住宅の売買によるものです。つまり、塗替え市場は活発であり、アパートや家を売買するたびに塗替え需要が生じています。2011年には時期尚早だったかも知れませんが、今時点はとても良い事業環境であると言わざるを得ません。 -
A2 (ウィー)
目標は毎年引き上げています。利益率が重視されていることは理解しており、各国の経営陣と話す時にはいつも強調しています。しかし、利益率のみに固執することは健全でないケースもあり、注意が必要です。なぜなら、利益率は当社の活動の結果を反映したものであるからです。
当社がシェアの拡大に注力している市場の中には、フロントエンドの利益率を低下させ、バックエンドの利益率を上昇させる戦略も考えられます。流通チャネルを構築している間や、異なる地域に異なる競合他社が存在する場合は、異なる製品の組み合わせが必要になることがあります。低い利益率で販売数量を増やすか、高い利益率で販売量を減らすプレミアビジネスか、その組み合わせになるでしょう。その組み合わせ方は、市場によって変わってきます。また、2015年以降に中国で見られたように、外装工事や環境配慮、エネルギー使用に関する新たな法律の導入に伴う市場の変化により、当社(Nipsea中国)を含めた多くの企業が外装断熱事業に参入しています。2015年には外装断熱事業へ未参入でしたが、今日では当社の重要な事業へと成長しています。その間、製品を作り、サプライチェーンを構築し、工場を建設しました。規制の変化に対応した市場や製品セグメントを構築する初期においては、当社の利益率に一定の影響を及ぼしました。今後の利益率の推移について言及することは非常に難しいと考えています。実際、株主価値最大化(MSV)はPER(株価収益率)にEPS(1株当たり当期利益)を掛け合わせたものであり、本当に注力すべきはEPSであると私は常々ご説明してきました。当社が追求するEPSと売上成長を毎年続けることができるのか?そのためには、売上を伸ばしていかなければなりません。つまり、さまざまな要因の影響を受ける中でも、常に前年比で売上成長を続けていけるよう、新しい市場に参入し、市場を開拓する必要があります。利益率を予測するのは皆さんの仕事であることは理解していますが、EPSと売上成長にご注目ください。 -
A3 (ウィー)
共同社長の若月はキャピタル・アロケーションの専門家ですが、私の立場からご説明すれば、キャピタル・アロケーションとは成長が見込まれ、利益が期待できる分野に資本を配分することです。なぜなら、それがEPSを成長させる唯一の方法だからです。したがって、当社の新工場の建設や市場へ投資状況を見れば、当社がどのような活動をする会社なのかを知ることができます。もちろん、ROICを指標の1つとしてモニタリングしていますが、全体としてはEPS成長率を重視しています。
(若月)
当社の事業活動は総じて、高いキャッシュ・フロー創出力があり、設備投資が非常に低い特徴があります。高い成長分野であっても、設備投資は売上収益の3~4%程度にとどまります。当社の利益率を考えた場合、全事業でキャッシュ・フローを創出しているので、A部門の資本をB部門に配分したり、M&Aがない限りは持株会社である当社が資金を供給する必要はありません。配当を実施するか、債務返済のために現金を使うかを考える必要はありますが、借入金利は1%未満と非常に低水準です。借入は全て円建てであり、日本の銀行からの強力なバックアップもあり、平均約5年という比較的長期の調達ができており、非常に強固なバランスシートを有しています。為替が円高に振れて金利が上昇した場合はどうするのか?との質問も受けますが、融資は全て固定金利のため、現行の借入金利が影響を受けることはありません。その上で、資金には限りがあるため、他の案件と比較しながらM&Aを実行すべきかどうかの優先順位付けが必要になります。そこで、ROICの考慮が必要になります。新株発行によるEPSへの影響だけでなく、潜在的な株式資本コストを含めた全体的な資本コストについて、しっかりと検討する必要があります。こうした検討を全方位から実施しますが、当社の資本基盤に現時点で何かしらの制限はあるとは考えていません。そのため、EPSを重視する方が進めやすいものの、当社はM&Aの案件分析を行う際にはDCF(割引キャッシュ・フロー)法やROICを含む全ての基本的な評価を実施しています。最終的に、特にMSVを語るのであれば、EPSは株主のためのものだと考えています。
調整後EBITDAの話は割愛します。こうした項目は最終損益にはあまり関係しません。当社が確実に達成したいことは、大株主であれ少数株主であれ、株主価値を増加させることです。これが当社の考え方です。過剰なレバレッジによって会社をリスクに晒さないことを簡単に理解してもらえるよう単純化しているとご理解ください。もちろん、MSVの考えに反するため、そうした行動は取りません。つまり、よりシンプルな方法を実践しているのであり、当社を分析する上で役立つことを願っています。
質問者:参加者3
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A1 (若月)
当社がNipseaを51%所有していた時代もありましたが、現在は基本的にほぼ全ての事業会社を100%所有している構造であり、制限はありません。しかし、税金としての資金流出については、日本での債務や配当にどう影響するかを常に検討しています。端的に言えば、それでも制限はありません。必要であれば、パートナー会社からもっと多くの資金を引き出しますが、必要なければそれもしません。なぜなら、先ほどもご説明の通り、日本では借入金を早期返済することもできますが、税金としての資金流出とは対照的に、0.3%程度の得にしかなりません。一方で、パートナー会社は再投資することで、当社のEPSをさらに高める潜在的な機会が得られることになります。
当社は一部で為替リスクも取っていますが、ブランドや販売網への再投資を通じて市場シェアを拡大して成長することを期待したものです。当社はキャッシュを必要とせず、それなりの配当金を支払っています。ウィーからのご説明の通り、EPS成長は非常に重要であり、各事業体のロードマップ作成時の指標としています。 -
A2 (若月)
源泉徴収税について述べています。実効税率を適用するのは連結ベースになることが多く、意義のある変化はないと考えます。
質問者:参加者4
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A1 (ウィー)
私自身も競合他社が第4四半期の業績について楽観的な見通しを持っていることに困惑しており、推測の範囲でしか答えられません。若月が第3四半期の決算説明会でご説明したのは、前年同期と比較した第4四半期の状況についてです。当社と競合他社は、昨年の第4四半期のベースが異なります。当社の昨年10月は過去最高の結果を残しました。これには複数の要因があり、うち1つは原材料価格の上昇に対応した製品値上げを1ヵ月に3回実施したことです。このようにハイペースで製品値上げを実施する場合、顧客が次の値上げを見越して在庫を積み上げることは予測できる行動です。その結果、昨年10月は過去最高の売上を達成しました。
今年の10月については若月からのご説明の通り、第4四半期に対する当社の見解に至る多くの情報が得られました。10月が低調だったのは、前年比較でのことです。また、大規模な党大会が終了したばかりで、交通や物流に関して多くの制限措置が取られるなど、厳戒態勢が敷かれたことも10月が低調だった理由です。これも当社の見通しに織り込みました。
また、一部の大都市では地区レベル、もしくは複数の地区にまたがるロックダウンが発生し、これも当社の市場見通しに影響を与えました。結果として、10月が低調であれば11月に回復することも期待しましたが、党大会後にどのような発表がなされるのか分かりません。政策が緩和されるのかどうかに関わらず、未知数が多いことに変わりありません。
また、12月は寒さが厳しい月であり、中国全土で低調な月であることも考慮しました。季節的に低調な月で、競合他社も含めて翌年の1月に期待します。しかし、例年と比べて来年は旧正月がかなり早く、1月22日に当たります。つまり、旧正月の2~3週間前になると、労働者が帰省し始めるため経済活動が減速します。したがって、1月も低調な月になると予想しています。これらを総合的に勘案し、第4四半期は期待するほど好調にはならないと見通しています。結果として、当社は慎重な業績見通しを行いました。
競合他社も同じ状況に直面するのか?との質問に対しては、前年ベース以外では、おそらく競合他社も当社と同じ状況に直面すると推察します。地理的要因の差が業績の差になる可能性もあります。当社が強みを持つ1~2級都市は物流やロックダウン、コロナ対応措置などの面で他の都市よりも大きな影響を受けています。一方、内陸部の地方都市は、少なくともこうした観点でははるかに恵まれている傾向があります。したがって、こうした差異が成長の差となって表れてくる可能性はあります。3~4級都市の状況を詳しくご説明するのは差し控えますが、3~6級都市における収益の割合は当社よりも競合他社の方が多いのが現状です。
当社の3~6級都市での戦略は順調に進展しており、全ての面で明るい兆候が見えています。顧客基盤を取り込み始めており、市場シェアも拡大したと確信しています。しかし、主要な競合他社などからシェアを奪っていると言うほどではなく、まだごく初期の段階です。おそらく中小の競合他社からシェアを奪うことは簡単にできるでしょう。過去18ヵ月にわたって事業環境が非常に厳しかったことに鑑みると、特に小規模な競合他社の場合、原材料価格の上昇に苦しんだと推察します。また、中小企業は在庫不足にも悩まされています。供給が限られている市場では、より大規模な企業が中小企業よりも多くの在庫を確保できるケースが多いのです。さらに、中小企業は債権回収の観点から流動性の問題を抱えています。中国における市場参加者の数は18ヵ月前よりも減少しており、規模を縮小する、または廃業した会社からシェアを一部獲得しています。1年後に当社がさらなる進展を遂げているかを確認する機会にご期待ください。現時点で進展があり、このプロセスを1年以上前に始めたことがむしろ幸運だったのかも知れません。コロナ禍で1~2級都市の成長がかなり鈍化する中、3~6級都市における成長が一部補完する形になっているからです。 -
A2 (ウィー)
確かに、当社が強ければ強いほど、より自信を持って製品値上げをすることができます。しかし、3~6級都市であっても、競合他社に追従して製品値上げをしているわけではありません。その主な理由は、3~6級都市の多く市場で当社と競合他社では提供する製品が少し異なり、製品ミックスも異なっているからです。こうした要因もあり、地域ごとの差別化、競合他社との差別化を図ろうとしています。多くの場合、おそらく当社は製品値上げにより積極的と言えます。そして、それは長年にわたってブランド強化に投入してきた多額の投資に支えられていると確信しています。当社のブランドはロイヤリティを作り出す特性を確かに備えており、値上げによって経営を成り立たせなければならないという理由だけで、顧客が簡単に離れていくことはないと考えています。
質問者:参加者5
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A1 (ウィー)
新築の不動産ディベロッパーに関して、この1年で当社の顧客層は変わってきています。4~5年前を振り返ってみると、当時の不動産市場は活況を呈しており、当社もその流行に乗ってしまったことに罪悪感もあります。新築の不動産ディベロッパーがかなりのペースで統合される中、上位30社については拡大を続けました。中国の新築市場に参入したければ、上位30社に入り込んでいく必要があります。当社を含む多くの塗料メーカーは、こうした上位30社との関係構築と事業領域の構築に注力してきました。
レバレッジ解消が進められる中、上位30社の多くが急ピッチにデレバレッジを進めています。中には深刻な財務状況に直面している企業もあり、最悪期を乗り切れるように努めていますが、当社は信用リスクを管理する中で取引条件を厳格化して対応しています。当社は成長し続けなければならず、現在の成長の柱は地域に根差し、信用基盤の固い、小規模な事業者との取引によるものです。また、従来の住宅だけでなく、複合開発や非住宅開発型の事業も視野に入れており、ディベロッパーに加えて、建設業者や供給業者とも緊密に連携しながら、顧客でありながらパートナーとしての関係を構築しています。このように、当社の不動産事業、Project事業の顧客基盤は確実に変化しています。こうした変化は、当社の成長がより多様な顧客基盤に基づくものになるという意味で、長期的にプラス寄与すると考えています。この間、当社は大手ディベロッパーとも慎重な姿勢で関わり続けてきます。大手ディベロッパーが復活した暁には、当社のこれまでのサポートを知っていますし、当社が現在かなり注意深く関与せざるを得なかったことも十分に理解できると考えます。
コロナ以降の経験について、若干でも楽観的な見方をするのであれば、全ての塗料メーカーは辛い状況を経験したものの、インドネシアにおける合理的な競争から何かしら学んだことです。