AOC社の買収に関する説明会 質疑応答要旨

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質問者:ゴールドマン・サックス証券株式会社 池田篤氏

  • A1当然シナジーは追求していきますが、当社はシナジーを考慮しなくても、安全なEPSの積み上げに資する買収を行っています。本件は、通年寄与ベースで+15~17円のEPS積み上げを非常に確実性が高く実行可能な買収です。さらに、一般的には、プライベート・エクイティ・ファンドの傘下では非常に厳しい規律を持って価値向上にまい進する一方で、3~5年の数年単位でエグジットしなければならないのに対し、買収後も長期的にアセットを保有する当社グループに加わることで、中期的な戦略やボルトオンM&A、キャピタル・アロケーションなどを検討できるため、買収後もさらに成長していくと見込んでいます。
    当社は顧客領域が重複しているかどうかは重視しておらず、シナジーを抜きにしても大幅なEPSの積み上げを期待できる点が本件の魅力と考えます。
    当社のシナジーに対する考え方ですが、買収3年後にシナジーが発現してEPSに+10円貢献する案件と、シナジー抜きでも買収初年度からEPSに+15円貢献し、今後のさらなる成長も期待できる案件では、どちらの案件に資本を使うべきかという比較なども含めて、本件は非常にメリットがある案件と判断しています。加えて、当社で馴染みのある塗料周辺分野に近しい領域であることや、設備投資負担が軽いことなども判断材料に含めました。
    したがって、現時点で定量的なシナジーがなければ買収しないのではなく、買収後にシナジーを追求することでさらなるアップサイドを貪欲に求めていきます。

  • A2詳細な交渉内容は回答できかねますが、本件はAOC社が売りに出たタイミングで動き始めたわけではありません。AOC社はプライベート・エクイティ・ファンドの傘下であったため、将来的なエグジットを予測する中で当社からアプローチをしていました。当社の考え方や当社がもたらす確実性などを踏まえて交渉したことに加えて、「株主価値最大化(MSV)」や「アセット・アセンブラー」モデルの考え方について売り手やAOC社の経営陣から非常に共鳴を得られたことは、AOC社が当社を選んだ理由の1つと考えています。

質問者:Millennium Capital Management Asia Limited 藤田知未氏

  • A12024年4月4日に開催した新中期経営方針説明会以降、また統合報告書2024でも記載の通り、M&Aに関しては「ローリスク・グッドリターンであれば、地域・事業・規模を問わず、ノーリミット」と表現しています。重要なのはリスクとリターンのバランス、対象会社のバリュエーションとリスク、キャッシュ・フロー、経営陣などの要素です。M&Aにはさまざまな要素がありますが、MSVの実現に向けて、自ら必要以上にタガをはめてしまうことは避けています。しかしながら、規制業種である銀行などは対象外であり、設備投資負担が重たい化学企業もやはり買収対象にしにくく、本件も広範なロングリストの中から選びましたが、たまたま既存事業と近い分野の企業でした。
    本件の検討内容をつぶさに公開することはできませんが、本日発表に至ったのは経営陣も含めて一定の条件が整った結果です。より川上の分野へM&Aを通じて進出する可能性は否定しないものの、市況によって利益が乱高下する企業は当社の経営モデルには合いません。そうした要素を総合的に勘案しながら、最終的には皆様に評価されるM&Aを実施することが肝心です。すなわち、EPSの積み上げだけではなく、PERも向上させる必要があります。MSVの実現には、当社のプラットフォームと知見を生かし、「enjoyable」な利益をどこまで追求できるかが重要です。M&Aに際しては幅広い要素を検討しますが、最終的な案件は皆様に納得していただける内容に落ち着くと考えています。
    塗料周辺分野を巡っては、DuluxGroupのSAF(密封剤・接着剤・充填剤)やBetek BoyaのETICS(断熱材)も買収当初から手掛け、カザフスタンのAlinaもモルタル材を取り扱っている通り、塗料事業でなければならない制限はありません。これらの企業は当社のプラットフォームのもとで、例えば資本力を生かして塗料を含めた成長が可能な企業ですが、仮にそうしたシナジーが当初から見込めなくても、基本的にしっかりした利益成長やキャッシュ創出力があり、経営陣が優秀な企業を買収対象としています。

  • A2さまざまな案件を検討する中で、アプローチする順番や実際に話し合いを重ねた結果です。本件は金額も大きく、同時に複数の案件を進めることは困難であることから、優先順位を付けた結果、本件が最適と判断しました。

  • A3説明資料P19で「迅速なレバレッジ解消によって新たな大型買収を可能に」と記載した通り、レバレッジ水準は2~3年内で直近水準まで戻る想定です。「相当数の類似アセットを検討中」と記載しましたが、具体的な数こそ明示しないものの、結構な数の案件を検討しています。M&Aはバリュエーションも含めて条件が整わなければ成立しないため約束はできませんが、当社が「アセット・アセンブラー」モデルを推し進めるには、本件のような案件を1~2年置きに実施することが重要です。もちろん、新株を発行する選択肢も厭わないことは従前申し上げている通りですが、負債調達を優先しても数千億円規模の案件を実行することは可能と考えます。実際に実行できるかどうかは慎重に判断しますが、今後もMSV追求のためのM&Aは続けていきます。

質問者:みずほ証券株式会社 吉田篤氏

  • A1株式価値ベースの価格はほぼ確定ですが、承継するAOC社の負債がクロージングまでに多少変動する可能性があります。ただし、それらの分担については売り主と明確に合意しており、企業価値ベースの43.5億米ドル程度には収まる見込みです。
    AOC社の負債は買収完了後に借り換えることを前提に、ホールディングスである当社が資金調達を予定しており、国内の金融機関からのコミットメントレターを取得しています。

  • A26,308億円は1米ドル=145円で計算しているため、今後の為替次第ではやや変動する可能性があります。基本的な要素は売り主と合意しており、為替以外の要因での大きな変動は見込んでいません。
    また、現時点で国内の金融機関からのコミットメントレターを取得済みです。手元現預金も使用しますが、金融機関からの借入によって賄う計画です。

質問者:SMBC日興証券株式会社 新谷泰大氏

  • A1AOC社の事業モデルは、原材料を混ぜて顧客に販売するという基本プロセスは塗料と同じであり、それほど大きな違いはないと感じています。具体的な内容は企業秘密もあるため全てを明らかにはできませんが、主なポイントをお伝えします。
    1つ目は、顧客との関係性です。AOC社は半製品を扱っており、顧客ニーズに応える材料を提供しています。顧客と直接やり取りする中で、技術やサービスを顧客の立地に近いところで提供できることが大きな強みです。汎用品を扱う事業とは異なり、AOC社が持つ配合情報に基づいて独自にカスタマイズした製品を顧客に提供することで、高く評価されています。
    2つ目は、顧客にとっての利便性です。競合他社には同業だけでなく、エポキシなどの素材を手掛ける企業も含まれますが、AOC社の製品はそうした競合の中でも確かなパフォーマンスを発揮しています。AOC社の技術力や商品開発力、イノベーションが高く評価され、結果として価格にも反映されていると考えています。
    他方、顧客サイドにおけるコスト全体に占めるAOC社の製品コストの割合は比較的高くありません。塗料も同様で、建築コストに占める割合はそれほど大きくないため、価格が適正であることが重要です。このようなポイントを総合的に評価されている結果だと考えています。
    AOC社の高い収益性に関しては、当社としてもプライベート・エクイティ・ファンドがエグジットする前の一時的なものなのか、あるいは持続可能なものなのか慎重に検討しました。AOC社は設備投資負担が軽いため、直前に設備投資を削減して減価償却を下げるなどといった事例とは異なります。非常に優秀な経営陣が収益性の向上を実現する力を有していることを確認しており、当社は非常に安心感を持って本件買収の決断に至りました。

  • A2仰る通り価格転嫁は簡単ではありませんが、過去のトラックレコードを振り返ると、2021~2023年に原材料価格の上昇や激しいインフレなどに見舞われても、AOC社は需要サイクルや原材料サイクルをしっかり乗り越えてきており、当社はAOC社がそうした力を備えていると認識しています。
    特に、AOC社は配合情報を自ら保持しており、かつ顧客の承認を得る必要がなく、パフォーマンスをしっかりと発揮することができます。当社の塗料が顧客の配合承認を必要とするケースが多いことに比べると、より柔軟な可能性があると感じています。

質問者:CLSA 証券株式会社 張一帆氏

  • A1EBITDAマージンの改善については、市場要因だけではありません。先ほど申し上げた通り、ビジネスシステムの徹底した適用や顧客に対する付加価値の提供などが要因となっており、市場が成長すれば単純にマージンの改善が見込めるわけではなく、そこがスペシャリティ・フォーミュレーターの強さです。
    2021年はコロナ影響からの反動増があったものの、その後はインフレやサプライチェーンの混乱によって需要が落ち込む中でもしっかりとマージンを確保できていることが、AOC社の強みです。したがって、マージンは単純に市場と連動するというよりは、持続可能なものであると考えています。
    AOC社の事業は石油化学とは全く異なり、設備投資負担も非常に低いため、スペシャリティ・ケミカルに分類されると認識しています。これらを総合的に勘案するとバリュエーションは10倍程度になる理解ですが、それが安いのか高いのかについて私から申し上げることはありません。売り手であるプライベート・エクイティ・ファンドとしては非常に良い投資リターンを得られていると理解しています。
    そうした中で、AOC社のROICは単純計算で当社連結ベースのWACC6%を初年度から十分に越えており、当社としても本件のバリュエーションは十分理にかなっていると考えています。初年度のEPSも通年寄与ベースで+15~17円の貢献を見込んでおり、安全なEPSの積み上げに寄与するものです。バリエーションの高低については皆様の評価に委ねます。

質問者:株式会社化学工業日報社 兼子卓士氏

  • A1現在のAOC社は、AOC社とAliansys社が合併したものであり、創業はそれぞれ1960年と1947年と非常に長い歴史を持っています。当初はファミリー会社で非公開会社ですが、CVCというプライベート・エクイティ・ファンドに両社が買収されたことをきっかけに2018年に合併し、AOC Aliansys社となりました。その後、2020年に現在のAOCという社名に変更し、2021年に親会社がCVCからローンスターに移りました。現在のLSF11 A5 TopCo LLCはローンスターに移った際に設立されたもので、企業としては非常に長い歴史を持っています。

  • A2半製品としていわゆる接着剤やコーティング剤の基になるフォーミュレーションを提供しています。説明資料P9に記載の通り、市場としては汎用品に近いものが多く、特に複合材料の非カスタム型が市場全体の70%を占めている中、AOC社が重視しているのはカスタマイズされたフォーミュレーションです。配合情報をAOC社自身が持ち、高機能を付加することにより、顧客と一対一の関係で提供しています。原材料自体は不飽和ポリエステルやビニルエステルであり、何か特殊なものを製造しているのではなく、配合設計において高い技術を持っています。塗料もさまざまな原材料を混ぜ合わせることで彩りや機能などを付加しながら販売しているという点で、非常に類似した事業だと考えます。

  • A3当社と競合するような自動車ボディ向け塗料などではなく、部品などへのコーティング剤を提供しており、異なる分野で事業をしています。ただし、AOC社の売上の約1/3が上位10社の顧客からのものであり、残り2/3はそれ以下の顧客からのものです。顧客基盤が非常に分散されており、カスタマイズされた製品を顧客ごとに提供しているため、特定の業界に依存せずに事業を行っています。
    全世界の景況感が悪化すれば事業への影響はありますが、例えば、米国ではインフラの老朽化が進んでおり、そうした修繕や保護のための材料としてAOC社の製品が使われるケースがあります。高いパフォーマンスと耐久性を提供することで顧客のニーズに応えることのできる比較的稀有な企業であり、AOC社と直接競合するような大手企業はあまり存在しない認識です。

  • A4多品種少量生産の側面はありますが、工場も非常に無駄のないオペレーションを行っています。ただし、基本的には反応釜などを用いた塗料の製造に似たプロセスでオペレーションしており、強力に自動化を推し進めているというよりは、メンテナンスが行き届いた設備を効率的に運用しています。そのため、設備投資負担も非常に低く抑えられています。
    メンテナンスが行き届いていれば必ずしもデジタル化の必要はなく、塗料製造の調色などでAIを活用しているように、必要な工程でAIを取り入れています。しかし、全体を大きく入れ替えるようなデジタル化は必ずしも必要ではないと考えています。

質問者:UBS証券株式会社 大村俊太氏

  • A1収益性の改善は終わりのないプロセスです。AOC社CEOのJoe Salley氏の言葉を借りれば、まだ「unfinished(完了していない)」な部分があります。ビジネスシステムの適用は米国でこそかなり進んでいるものの、欧州ではまだ適用する余地がかなりあると彼は考えています。米国市場がより大きいため、まず米国を優先して取り組みましたが、欧州市場でも今後のプラス効果が期待できる見込みであり、特に欧州などではボルトオンM&Aの可能性があると彼は話しています。
    市場そのものについても、説明資料P9で記載の通り、市場低迷からの回復局面はタイミングの問題こそあれ、必ず起きると見込んでいます。今すぐ急成長が期待できるわけではないかも知れませんが、5年程度のスパンで見れば市場成長を十分に期待できる見通しです。そうした中で、AOC社が付加価値を提供することで、売上成長に加えて、最も重要な利益成長を図っていく計画であり、1桁台半ば~後半の利益成長を達成することが十分に可能と考えています。
    市場回復を1つの前提としつつも、それがなくてもビジネス上の改善余地もまだ数多く残っており、AOC社全体のマージンについても現在の水準を最低限維持できると見込んでいます。

  • A2いいえ、ビジネスシステムの改善は多層的に取り組んでいます。例えば、新製品を開発する際には、原材料担当者と調達担当者が緊密に連携しながら代替材の可能性について議論する必要があります。その上で、生産部門も短納期対応などについて検討しながら各工程を細かく数量化してくことで、最終的な価値創造につなげています。
    こうした取り組みは「トヨタ生産方式(TPS)」に由来しており、米国ではかなり根付いている一方、欧州ではこれから適用を進めていきます。

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