中期経営方針アップデート説明会 質疑応答要旨

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質問者:BofA証券株式会社 榎本尚志氏

  • A1収益性を伴う市場シェアの拡大を目指しており、収益性を犠牲にしてまでシェアを追求することはしません。特にドミナンスを獲得している地域では、さらなるシェア拡大には利益へのマイナス影響が生じる可能性があるため、バランスを取りながら取り組んでいます。また、中国TUCでは、シェアが上昇している可能性はあるものの、有意なデータが不足していることから、慎重に見積もっています。
    中国TUBについては、採算性の合わない顧客を無理に取り込むことを避けており、結果的にシェアが横ばいとなっています。中国TUCは地域ごとにシェアの状況が異なっており、特級・1~2級都市でのシェアは高い一方、3~6級都市ではまだ成長の余地があり、TUC全体で25%としています。シェアはあくまで当社の推定であるため、事業の前年対比での売上成長などを見た方が市場の競争状況を実感していただきやすいと思います。
    全体としては、金額ベースで売上が伸びている地域が多く、どの地域も基本的にシェアを落とさず、維持あるいは拡大していることから、特に懸念する必要はないと考えています。

  • A2戦略は変わっておらず、シェアと収益性の両方を向上させることを目指しています。市場環境が良い時はシェアをやや優先しつつも収益を確保することが可能な一方で、市場環境が厳しい時は無理に製品値下げをしてまでシェアを取りに行くことはせず、収益性を重視しています。現場に柔軟性を持たせており、最終的にはシェアと収益性を両立できるようにしています。これが当社の「自律・分散型経営」の1つの鍵であり、各地域・事業が長期的に正しい判断を見極め、施策を行うことを重視しています。

質問者:ゴールドマン・サックス証券株式会社 池田篤氏

  • A1関税の影響については見通しが非常に不透明なため見立てが困難です。当社は地産地消モデルを基本としており、原材料を輸入している場合でも原材料価格上昇を製品価格に転嫁することで吸収可能ですが、関税による景気悪化がGDPに影響を与える場合はネガティブな影響が懸念されます。ただし、短期的には大きな問題になるとは現時点では考えていません。
    AOCの事業はインフラや輸送分野向けも多く、これらの市場は金利の影響を受けるため、近年の高金利により投資が滞る状況が見受けられます。中長期的には特にインフラ需要は堅調であるものの、需要回復の時期が後ろ倒しになっているため、2025年の販売数量はやや減少する見通しです。ただし、AOCは市況が厳しい中でも強固なビジネスシステムの追求によって収益性を継続的に高めてきたことから、2025年は少なくとも維持できると見込んでいます。
    2024年10月の説明会資料における営業利益率34%については、無形固定資産の償却が含まれず、特定の非継続的項目も除いた数値となります。今回開示した営業利益率30.7%には、現時点で想定しているPPAが含まれています。10月発表の見通しと比較して、償却前・償却後のいずれの営業利益率も計画通りの数値になりました。EPSについても、償却を加味して試算しており、同じく計画通りの結果となりました。
    シナジーについては、既に購買面で同じ原材料や共通のベンダーを活用する取り組みが進んでいます。また、各パートナー会社がAOCのビジネスシステムから学び、取り入れられるものもある見込みです。ただし、各アセットの自律的な取り組みに任せており、シナジーなしでも十分な採算は取れていることから、あくまでアップサイドの要素としてご理解ください。

  • A2クロージングしてから1ヵ月が経過した現時点では想定通りです。2024年10月からAOCとは密にコミュニケーションをしており、主要人材の流出リスクも現時点では見られません。むしろ、当社グループで付加価値をさらに高めたいという意欲が感じられます。
    懸念点としては、連結ベースでの貢献に円高が影響を与える可能性があることや、関税の影響が不透明であることです。ただし、広大な米国市場における中長期的なインフラ需要を考慮すれば、短期的な変動はあったとしても、中長期的には着実に収益を上げられる会社であるとの見方に変わりはありません。

質問者:シティグループ証券株式会社 西山祐太氏

  • A1当社は常に費用項目を見直しています。NIPSEA中国でも収益性と成長のバランスを取ることを重視してきましたが、マージン自体を目的化することはせず、例えば15%の利益率を目指すことが将来の成長を阻害するのであれば、12%でも良いと判断することもあります。こうしたバランスを取ることが経営の要諦であり、各地域のリーダーが適切な判断を行っています。それをウィー・シューキムが1つずつ確認しながら、人件費などの各項目を「これで良いのか?」「複数の事業で共通化できないのか?」など検討しています。したがって、市場シェアの向上だけを目的化せず、収益性を確保しながらシェア拡大を目指すことが重要であり、販促を強化すればシェア拡大は実現できるとしても、それに見合った収益性が確保できない場合は販促を控える判断をします。中国の競合他社は1桁台の利益率である中、当社は2桁台の利益率を維持しており、ある程度の試行錯誤を許容できるだけの余裕はあると考えています。
    最後に、ブランド力は一朝一夕では衰えないものの、地域によっては売上に対して一定の割合のブランド投資を常に継続する必要があります。例えば、DuluxGroupは市場シェア50%を超えていますが、ブランド投資の継続が重要と考えていますし、NIPSEAのように市況に合わせて柔軟に対応する地域もあります。
    簡単な方程式はないものの、各地域・事業で正しいことを適切に行い、結果を示していきます。

質問者:野村證券株式会社 岡嵜茂樹氏

  • A12024年の売上実績は10月の発表時より若干下振れ、2025年予想では前年比で「0~-5%」程度を予想しており、価格面では改善がある一方で、販売数量は市場全体が伸び悩む中で減少すると見込んでいます。そうした中で、限界利益を向上させることで、売上は微減でもEBITDAマージンは若干上昇する見通しです。
    説明資料P9のとおり、市場成長予想は金額ベースで+5%、数量ベースで+3%と見込んでいます。現在の米国市況は不透明ですが、中長期的なインフラ需要に対する確信は引き続き持っており、また米国市場の強さ、レジリエンスもあると考えています。今後の米国市場の回復時期に対する見立てはさまざまであり、当社としても一刻も早い回復を待ち望んでいますが、キャッシュの順調な創出、収益への貢献という面では、AOCに対して特段の懸念はありません。

質問者:みずほ証券株式会社 吉田篤氏

  • A1現時点で1-3月の状況をお伝えすることは差し控えたく、5月の第1四半期決算時に改めてご説明いたします。市況環境は依然として厳しいものの、当社のビジネスモデルは非常に強固であり、ブランドの強さなどは競合他社が模倣できるものではなく、自信を持っています。また、依然開拓余地が大きい3~6級都市でも成長が続いています。経済環境に関して楽観的な材料は持ち合わせていないものの、マクロ経済と当社の状況はある程度切り離して考えいただければと思います。
    関税の影響については中国に限らないものの、当社のビジネスは基本的に地産地消モデルなため、直接的な影響は一部の輸入原材料の価格上昇による価格転嫁の可能性などに留まります。より大きな影響としては経済環境そのものに対する影響であり、GDPや経済成長が低下すれば、塗料が必需品であるとはいえ、消費者需要に影響を与える可能性があります。自動車についても、輸出などに影響が出る可能性があります。
    現時点では状況を注視するしかありませんが、当社のビジネスモデルは需要も含めた底堅さを持っていることから、大きな変化が起きる可能性は低いと考えており、こうした点が当社の強みと認識しています。

質問者:SMBC日興証券株式会社 新谷泰大氏

  • A1AOCの競争力については、競合他社との兼ね合いもあるため、差し障りのない範囲で申し上げます。元々15~20%の利益率が取れる業界であり、AOCも現CEOが参画する前は平均的な水準でした。特別な技術があるわけではなく、立地の優位性や顧客との強固な関係が競争力の源泉となっています。業界統合が進み競合他社が減少する中で利益率が上昇しており、AOCは特に高い利益率を実現しています。
    その背景には、AOCのビジネスシステムの貢献があります。ビジネスシステムは、コマーシャルエクセレンス、新製品開発、調達、無駄のないオペレーションの4つの象限で構成され、付加価値を生む出す強固なシステムとなっています。無駄のないオペレーションの実現は、塗料各社が特に力を入れている部分でもあり、AOCも効率的な工場運営や無駄の排除により高い収益性を確保しています。
    顧客との関係については、AOCが独自のフォーミュレーションを有していることの貢献が大きく、配合設計における自由度を生かし、収益性を高めています。顧客のコスト構造に占めるAOC製品の割合が低いことから、顧客へのパフォーマンスと利便性を両立させることで、非常に密接で継続的な関係を構築しています。
    業界統合が進んだ結果、参入障壁が高まり新規参入が難しい状況もAOCの競争力を支えています。例えば、米国で新たな化学工場を建設するのはなかなか困難ですが、AOCは既存工場をメンテナンスしながら効率的に運用しており、先行者利益を享受しています。AOCは顧客の理解を十分に得ながら収益を追求し、差別化要素を持った経営を実現しています。

  • A2フォーミュレーションについては、AOCの提供する製品が独自性を持っており、フォーミュラを開示していないため、競合他社が模倣するのが困難な状況を作り上げています。この点が参入障壁として機能しています。
    欧州でもフォーミュレーションの展開を進めていますが、現状では顧客側での汎用品の使用比率が高く、コストに対する感度が米国よりも厳しい状況です。ただ利益率は改善しており、今後さらに改善する可能性がありますが、米国並みに利益率を高めることができるかについては、現時点では様子を見ている段階です。欧州においても収益性を維持・拡大していくことは、AOCの経営陣とも完全に一致しています。

質問者:JPモルガン証券株式会社 仲田育弘氏

  • A1バリエーションについては、取締役会でも常に議論しています。私のミッションは「PERの最大化」ではありますが、皆様に対していたずらに高いマルチプルを求めているわけではありません。1つ重要なのは実績を積み重ねることであり、先ほど「AOCの買収は1つの始まり」と申し上げましたが、AOCと同じように安全かつ収益貢献が可能なアセットを着実に積み上げ、かつ財務を毀損せずに進めることで、当社経営に対する信頼を獲得していきます。
    また、既存事業も着実に成長しており、純粋に株主価値を最大化しようとしているマネジメントを含めた当社のプラットフォームは非常に優れていると安心感を持っていただくことも重要だと考えています。当社は日本の低金利をしっかり活用してレバレッジを効かせようという意思を経営が持ち、また取締役会は健全で適正なリスクテイクを促す体制を具現化しており、塗料という枠を超えて、「EPS積み上げマシーン」として株主に報いていくことを追求しています。当社の経営にはこうしたこだわりが根底にあります。
    米国の競合他社のようにキャッシュを活用して自社株買いを行う経営も素晴らしいですが、当社はそうした経営とは異なるアプローチを採っています。当社はオーガニック、インオーガニックの両面でEPSを積み上げていく方針であり、そうした方針を独立社外取締役が過半数を占める取締役会全体で共有しながら、「EPS積み上げマシーン」としての信頼感、納得感を醸成していきます。
    これを短期的な話に留めず、実績を伴い、約束を守り、言行一致を愚直に続けていくことで適正な評価を得ていきたいと考えています。

質問者:CLSA証券株式会社 張一帆氏

  • A1トルコとインドネシアについては、政情不安も含めて影響を注視しています。インドネシアルピア安は、インドネシア事業による円ベースでの貢献が減少するため、ネガティブな影響があります。ただし、地産地消モデルにおける現地での影響については、特に3月のラマダンもあり、まだ明確には見えていません。5月の第1四半期決算発表時には、より具体的な見解をお示しできる見込みですが、現時点では慌てる必要はないと見ています。
    トルコについても同様であり、抗議活動がある程度収束すれば大きな問題にはならない見込みですが、新興国特有の地政学的リスクも含めて予断を許さず、加えて為替影響の問題、超インフレ会計の影響などが懸念されます。現地の政情不安が消費行動に影響を与える可能性もありますが、塗料は需要が根本的に消失するような事業ではない点が当社の強みであり、レジリエンスを持っていると考えています。短期的な変動はあるかもしれませんが、中長期的な戦略において大きな懸念はありません。

質問者:UBS証券株式会社 大村俊太氏

  • A1大統領選後、特別な対策を講じてきたわけではありません。関税が上昇する局面では原材料などの在庫を積み増す対応を米国も含めた各国で実施しています。一方、地産地消モデルにより輸出依存度が低いため、関税の影響は見極めにくいのが実情です。米国では原材料のベンダーが関税に関係なく一律で値上げを通知した翌日にはそれを撤回するなど、状況が日々刻々と変化しており、注視しています。したがって、製品への価格転嫁の準備は進めていますが、状況を見極めながら対応していきます。米国の塗料市場は輸入品の比率が高くないことから、関税によって競争環境が大きく変化することはなく、また使用する原材料も競合各社で大きく差はないため、当社事業に対して根本的な影響が出るリスクは高くないと見込んでいます。
    インドネシアについては、株価下落や米国への輸出抑制がある中で、無駄な支出を避け、効率的な運営を心掛けています。期初に立てた目標を達成することに徹底的にこだわり、地道にやるべきことを実行していきます。アジアではNIPSEAグループのDNAとしてコストコントロールが強く根付いており、またAOCやDuluxGroup、日本でも同様の姿勢を持っています。特別な策を講じるのではなく、基本に対して忠実に取り組むことが重要と考えています。
    買収機会については、事業の特性によります。関税リスクが高い事業の場合は慎重に検討する必要がありますが、例えば米国市場は中長期的なレジリエンスがあることも踏まえて検討しています。むしろ、現在の状況がチャンスとなる可能性もあるため、常に抜け目なく検討を続けていきます。買収に黄金律があるわけではなく、1つ1つの案件を丁寧に検討し、買収を目的化せず、良い事業を適切な価格で取得することを重視していますので、当社の経営に信頼を寄せていただければと思います。

  • A2原材料在庫については地域によって異なりますが、米国では関税の影響を受ける可能性があるため、一部で積み上げています。製品については、長期保管できるものではないため在庫を積み上げていません。運転資金を多く必要とする事業ではないことから、それ自体が収益性に大きな影響を与えることはないと考えています。また、キャッシュ・フローがネガティブになるような無理な運転資本の積み上げも行っていません。

質問者:シティグループ証券株式会社 西山祐太氏

  • A1当社の中長期的なオーガニックの成長力は変わっていません。例えば、NIPSEA中国TUCは2024年に売上成長が+6%と控えめだったものの、市場のポテンシャルや利益を伴う成長を目指す点も考慮した上で現地が目標設定しています。私が強制した目標数字ではなく、現場の経営陣とウィー・シューキムでの議論を通じて導き出された数字です。
    全体的には、関税の影響による世界経済の不透明感が短期的にネガティブな影響を与える可能性があり、2-3年という期間で見れば厳しい面もありますが、各パートナー会社のCEOたちは利益を伴う成長をミッションとし、貪欲に追求しています。そのため、現時点で「弱い」と評価するアセットはありません。マクロ経済の影響も踏まえながらも、当社の意志としてこの程度は成長するべきという考えが反映されているとお考えください。
    インドについては、特に建築用で新規参入もあり厳しく、市場環境もやや厳しい状況です。インド2事業の買い戻しを発表した2023年8月時点と比較すると、厳しい状況になっている認識です。
    トルコについては、複雑な状況です。インフレや金利上昇の影響で一時的に景気が停滞し、通貨を現物に変える在庫の積み上げの動きが今後落ち着く局面が来ると予想されます。しかし、超インフレ会計の影響がいつかはなくなるプラス面もあれば、抗議活動などの不安定要素もあり、トルコ市場は見通しが非常に難しい状況です。
    DuluxGroupの太平洋事業は問題ない一方、欧州事業ではフランス市場の回復が焦点となっており、2025年は少なくとも前年並みと予想しています。ロシアとウクライナの紛争の影響もあり不透明さが続いていますが、当社としては成長と収益性を両立させて達成していく方針です。

  • A22025年は変節点であるため営業利益率が+1%~+2%改善するとしていますが、中期成長予想の矢印を変更するほどではありません。中期的にマージンが上がっていくイメージではなく、厳しい環境の中でもマージンを維持しつつ、利益を確保する方針です。売上が伸びた場合でも、オペレーティング・レバレッジをひたすら追求するというよりも、継続的な投資を行いながら成長を目指していきます。そのため、短期的な目標とは少し異なるとご理解ください。

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